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江戸時代の晩ごはんを再現する 江戸の夜は、冷や飯から始まる

朝に炊いた一日分の飯を、おひつで夜まで持たせる。
庶民の夕食を一週間分、当時のつくり方で再現した記録です。

再現した江戸時代の庶民の夕食。冷や飯、サツマイモの味噌汁、たくあんを膳に並べたもの
一日目の膳。冷や飯・サツマイモの味噌汁・たくあんという一汁一菜

この記事でわかること

  • 当時は朝に一日分の米を炊いておひつに入れて保管し、夜になるとそこから飯をよそって食べていた
  • 夕食は冷や飯に煎茶をかけた茶漬け、雑炊、味噌汁をかけたねこまんまのようなものが多かった。冷めた飯を温かくするためとも、食器を洗う手間を省くためとも言われる
  • 一日目の冷や飯・たくあん・サツマイモの味噌汁は、江戸庶民の典型的な夕食、一汁一菜の基本形
  • 五日目は胡椒飯(胡椒を混ぜた飯に出汁)、うり三杯酢、呉州汁(鰯・ネギ・おから)という変わり種の献立
  • 六日目のいかと里芋の煮ものは、屋台で売られていたとされる一品。自炊が得意でない独身者のための煮売り屋という屋台があった

江戸時代の庶民は夜、何を食べていたか

江戸の庶民の夕食は、朝に炊いた飯の残り、つまり冷や飯から始まります。 当時は朝に一日分の米を炊き、おひつに入れて保管しておりました。 夜になると、このおひつからご飯をよそって食べていたのです。

食文化が発展した江戸時代。 しかし、その実態は庶民にとって決して豊かなものではありませんでした。

質素ながらも、季節の恵みと保存の知恵を活かした食事。 そこから当時の暮らしぶりを探るべく、庶民の夕食を一週間分再現しました。

冷たい飯を、どう食べたか

当時の夕食は基本的に、冷や飯に煎茶をいれた茶漬けや、雑炊、 味噌汁をいれたねこまんまのようなものが多く食べられていました。

冷めたご飯を温かくするためとも、食器を洗う手間を省くためとも言われています。

参照した史料

今回の再現で参照したのは、次の書物です。

一日目・冷や飯とサツマイモの味噌汁

一日目の献立は、冷や飯・たくあん・サツマイモの味噌汁。 江戸庶民の典型的な夕食、一汁一菜の基本形です。

冷や飯
米/煎茶 お好み
サツマイモの味噌汁
サツマイモ 1個/大根 三分の一/江戸味噌 適量 ―― 材料表に出汁の分量の記載はないが、出汁の入った鍋で煮ている
たくあん
江戸時代を代表する漬物。漬物は江戸庶民にとってかけがえのないおかずで、栄養豊富な保存食だった
釜から炊きあがった飯をしゃもじで木のおひつへ移しているところ
朝に炊いた一日分の飯は、おひつに移して保管しておく

サツマイモは乱切り、大根はいちょう切り

まな板の上でサツマイモを包丁で乱切りにしていく手元
サツマイモは乱切りに。一つ一つが大きくなるので食べ応えがある

サツマイモという名の由来は、江戸時代に琉球王国、つまり沖縄県から 薩摩国、現在の鹿児島に伝わり、栽培された事が由来だそうです。

続いて大根の皮を剥き、いちょう切りに。 大根も庶民の生活において身近な存在であり、保存食として優秀な野菜でした。

材料が切り終わったら、出汁の入った鍋にいちょう切りした大根を入れ、 軽く火が通る程度に煮ていきます。 軽く火が通ったら、続いて主役のサツマイモを投入。

飢饉を逃れた芋

サツマイモは江戸中期以降、庶民の重要な食材でした。 享保の大飢饉の発生後、第八代将軍徳川吉宗が飢餓対策からサツマイモの栽培を推奨したといわれており、 その後の天明、天保の大飢饉の難を逃れたといわれています。

また、幕末の薩長土肥はサツマイモが常食の藩だったことが 明治維新推進の原動力にもなったとの話もあるそうですよ。

大根とサツマイモが煮えた鍋に、味噌を溶き入れているところ
十分程を目安に煮て、江戸味噌を入れて味噌汁に仕上げる

十分程を目安に煮ていけばサツマイモも十分柔らかくなっているので、 ここに江戸味噌を入れて味噌汁に仕上げていきましょう。 慣れない方は竹串などでさつまいもをさし、スッと串が通ったら頃合いです。

まな板の上で黄色いたくあんを包丁で切っている手元
おかずは江戸時代を代表する漬物、たくあん

最後に、煎茶をかける

椀によそった飯に、注ぎ口のある器から煎茶を注いでいるところ
おひつから冷や飯をもりつけ、そこに煎茶をかければ一日目の夕食の完成

煎茶の風味があり大人な味で、たくあんとの相性もよい。 サツマイモの味噌汁はほくほくで、味噌汁の塩味とサツマイモの甘味とがあいまってとてもうまい。

なによりサツマイモの食べ応えがあって、おなかが膨れます。

二日目・時雨茶漬けとひじきの煮しめ

二日目は時雨茶漬けとひじきの煮しめ。 時雨茶漬けは、普通の茶漬けに少し手を加えた、やや贅沢な一品です。

時雨茶漬け
冷や飯 適量/ハマグリ 10〜15個/酒 大さじ3/醤油 大さじ3/みりん 大さじ2/砂糖 大さじ1/生姜 適量/大葉 適量
ひじきの煮しめ
乾燥ひじき 10g/にんじん 1/3本/こんにゃく 1/4枚/油あげ 1/2枚/ごま油 大さじ1/酒 大さじ1/みりん 大さじ1/2/醤油 (原典の分量表記が欠落)

桑名のハマグリ

木桶に張った塩水にハマグリを並べて砂抜きをしているところ
塩水にハマグリを入れて一晩寝かせ、砂を抜く

まずは塩水にハマグリを入れて一晩寝かせ、砂抜きをしていきます。 一晩たち十分に砂抜きをしたら、鍋に入れて口が開くまでじっくりと煮ていきましょう。

江戸湾でもハマグリは取れていましたが、当時一番有名だったのが伊勢の桑名ハマグリ。 『本朝食鑑』にも桑名のハマグリは上質で味がよいと書かれているほどです。

煮汁が三分の一になるまで

鍋の中で煮汁が煮詰まり、照りの出たハマグリの時雨煮
煮汁が三分の一になるまで煮詰めたら、できあがり。見事な照り

口が開き、出汁も十分取れてきたら、一度ハマグリを鍋からさらいます。 あとは、ハマグリの煮汁も別で少々取り出しておく。 次に黙々とハマグリの身を剥いていきます。

生姜を千切りにし、ハマグリのうまみが詰まった出汁に砂糖、みりん、酒、醤油を入れる。 二分程温めたら千切りした生姜を入れ、また三分程温める。 そしてハマグリを入れ、煮汁が三分の一になるまで煮詰めたらできあがりです。

椀によそった冷や飯の上に、箸でハマグリの時雨煮をのせているところ
冷や飯の上に時雨煮をのせ、取り分けておいた煮汁をかける

鹿の尾の菜と書いて、ひじき

ひじきは江戸時代から庶民に愛された海藻で、栄養価も高く保存も利く優秀な食材です。 まずはひじきを二十分ほど水で戻していきます。

ちなみに「鹿尾菜(ひじき)」は漢字で鹿の尾の菜と書きます。 再び登場『本朝食鑑』に、見た目が鹿の尾のような海藻と書かれているのです。

水で戻している間に、人参・油揚げ・こんにゃくをそれぞれ短冊切りに。 江戸の中期には食卓にもあがることが多かった油揚げは、 値段も一枚五文、約150円程度と懐にも優しく、豆腐よりも長持ちすることから重宝されました。

鍋の中で煮上がったひじきの煮しめ。人参・こんにゃく・油揚げが見える
海の恵みと山の恵みを組み合わせた、ひじきの煮しめ

鍋に油をしいて材料を投入し、それぞれの具材に火が通ってきたら 酒、みりん、醤油で味付けし、じっくりと煮詰めます。 全体的に煮汁がなくなったら、ひじきの煮しめのできあがりです。

二日目の膳。時雨茶漬けとひじきの煮しめが並んでいる
二日目。ちょっと豪華な晩御飯になった

ハマグリの風味がすごい。 しっかりと煮詰めたハマグリと生姜の濃い味でご飯がすすみ、 さらにハマグリの出汁で濃い味なのにさっぱりとした後味。

ひじきも少し濃い味付けになっていますが、この味がご飯を進ませるのです。

三日目・芋たこ汁と牛蒡醤油漬

三日目は冷や飯と牛蒡醤油漬、そして芋たこ汁。 タコは江戸湾でよく獲れた身近な海の幸で、里芋は庶民によく食べられていました。

芋たこ汁
里芋 100g/ゆで蛸 60g/だし 400ml/みそ 大さじ1
牛蒡醤油漬
牛蒡 1本/醤油 適量

牛蒡は、茶菓子でもあった

縞模様の鉢に張った醤油に、切った牛蒡を漬け込んだところ
牛蒡を醤油で漬け込み、二日ほど寝かせる

包丁で牛蒡の皮をこそげ落としたら、適切な大きさに切っていきます。 ちなみに『料理物語』では、牛蒡は茶菓子としても食べられていたそう。 シイタケの煮付けも茶菓子として食べられていたと考えれば、牛蒡も似たようなものでしょうか。

こちらの牛蒡を醤油で漬け込み、二日ほど寝かせたらできあがりです。

ぬめりを、あえて取らない

器に置いた、下茹でしてピンク色になったタコの足
下茹でを終えて綺麗なピンク色に。灰汁取りと、切りやすくする意味がある

これはちょっと手間がかかる一品で、まずはタコを下茹でしていきます。 この下茹でには、タコの灰汁取りや切りやすくする意味もあるのです。

綺麗にピンク色になったタコを一口大に切っていき、次は里芋。 六方むきにしたら、ぬめりを取らずそのまま出汁の入った鍋に投入していきます。 いつもはぬめりを取りますが、このぬめりを活かしたのが芋たこ汁。

朱の椀によそった芋たこ汁。里芋とタコが入っている
ちょっととろみのある芋たこ汁の完成

里芋も煮えてきたら、ここに先ほどのタコを入れてさらに一煮立ち。 味噌を溶き入れて煮ていけば完成です。

三日目の膳。冷や飯、芋たこ汁、牛蒡の醤油漬けが並んでいる
三日目。冷や飯に芋たこ汁、牛蒡の醤油漬け

牛蒡の醤油漬けは、これはしょっぱい。 ですが牛蒡の味が奥の方にあり、癖になる味でご飯を掻き込む手が止まりません。

とろみのある味噌汁はどんな感じか不安でしたが、あうものですな。 里芋もたこも柔らかく、なにより具が多くあり食べ応えもあり、 かつ、ほっと一息つく味付けでした。

四日目・紫蘇飯と茗荷と梅干しの吸い物

四日目は紫蘇飯と梅干し、 そしてせっかくなので梅干しを使った茗荷と梅干しの吸い物に。 紫蘇飯は『料理伊呂波庖丁』からの一品です。

紫蘇飯
冷や飯/青ジソの葉 5枚/だし 200ml/塩 少々 ―― 暑い日がつづいたため、今回は出汁ではなく麦茶をかけた
茗荷と梅干しの吸い物
茗荷 2個/梅干し 2個/だし 500ml/酒 大さじ3/みりん 適量/しょうゆ 適量/塩 少々

紫蘇を刻み、塩で揉む

まな板の上で青じそを包丁で細かく刻んでいく手元
紫蘇を細かく刻んでいく

紫蘇を細かく刻んでいき、塩でよく揉んで水分を出します。 紫蘇は江戸時代から薬味として珍重され、 特に夏場の食欲増進に効果があるとされていました。

刻んだ紫蘇を混ぜた飯を、しゃもじで椀によそっているところ
紫蘇がしんなりしてきたら冷や飯に混ぜ、お椀によそう

紫蘇がしんなりしてきたら、冷や飯に混ぜ、お椀によそっていきましょう。 暑い日がつづきますので出汁ではなく、今回は麦茶をかけて紫蘇飯の完成です。

夏にぴったりの吸い物

まな板の上で茗荷を包丁で薄切りにしている手元
まず茗荷を薄切りにしていく

茗荷は現代でも夏バテに効果があり、 江戸の人たちも夏場には旬野菜として食べていたそうです。

続いては梅干しの種をとり、梅肉を細かく刻んでいきます。 温めた出汁の鍋に刻んだ茗荷、そして生姜を入れていき、二、三分程煮ていく。 それぞれに火が通ったら酒、みりん、醤油、塩を加えてまた一煮立ちさせましょう。

朱の椀によそった、茗荷と梅干しの吸い物
梅干しの酸味と茗荷の香りが漂う。お椀によそえば完成
四日目の膳。紫蘇飯、茗荷と梅干しの吸い物、梅干しが並んでいる
最後に特製梅干しを添えて、四日目の献立の完成

特製梅干しは相変わらずしょっぱうまい。 紫蘇飯はちょっと不思議な味で、こちらも少し塩辛いかんじがします。

吸い物で口直し。茗荷の清涼感と梅干しの程よい塩味がいいバランスで、 これは夏場にはもってこいの献立でした。

五日目・胡椒飯とうり三杯酢、呉州汁

五日目は胡椒飯、うりの三杯酢、呉州汁(ごすじる)と、 ちょっと変わり種をつくっていきます。

胡椒飯
冷や飯/だし 300ml/醤油 大さじ1/2/塩 少々/荒引き黒胡椒 少々
うり三杯酢
瓜 100g/大葉 1枚/酢 大さじ1/酒 大さじ1/醤油 大さじ1
呉州汁
鰯 1匹/長葱 1本/出汁 300ml/味噌 適量/おから 適量

庶民も胡椒を使うようになった

すり鉢の中で黒胡椒をすりこぎで潰しているところ
つくり方はとても簡単。まずは胡椒を細かくしていく

江戸の初期でこそ胡椒は大変高価な調味料でしたが、 町人文化が発達した江戸中期以降は、庶民も少しずつ使うようになりました。

次に出汁の準備。煮干しでとった出汁に塩と醤油をいれる。 なんとこれで下準備はおわりです。

おひつの中の飯に、しゃもじで胡椒を混ぜ込んでいるところ
おひつの蓋を開けて細かくした胡椒をいれ、まぜていく
胡椒を混ぜた飯をよそった椀に、出汁を注いでいるところ
お椀によそって出汁をかけたら、胡椒飯の完成

スパイシーな香りがあり、食欲をそそります。

うりは、庶民に人気の夏野菜

まな板の上でうりを包丁で切っている手元
うりを薄切りにして、塩水の中に五分ほどつけていく

続いては『精進献立集』から、うりを使ったうり三杯酢。 こちらも簡単にできるおかずです。 当時うりは庶民に人気の夏野菜でした。

つけている間に三杯酢をつくっていきましょう。 鍋に酢、酒を火にかけていき、酒のアルコールが飛んだら醤油を加えれば 三杯酢の出来上がり。

器に盛ったうりに、木の匙で三杯酢をかけているところ
水けを切ったうりに三杯酢をかけて和える。好みで大葉を載せる

鰯とネギとおからの汁

焼き網の上で鰯を焼いているところ
まずは鰯を焼く。香ばしいにおいがたちこめてくる

汁ものは呉州汁。 こちらは鰯とネギ、そしておからを使った、栄養満点で食べ応えのある汁物です。

焼きあがった鰯の頭と尻尾を落としてぶつ切りに、ネギも一口大に切っていきます。 出汁の入った鍋にまずはネギ、おから、そしていわしを入れ、 おからを溶かしていきながら煮ていく。

そしてネギといわしに火が通った頃を見計らい、味噌を溶き入れれば呉州汁の完成です。

朱の椀によそった呉州汁。ぶつ切りの鰯とネギが入っている
濃厚な味わいと栄養が詰まった、江戸庶民の知恵が光る一品
五日目の膳。胡椒飯、呉州汁、うりの三杯酢が並んでいる
五日目。手軽にできる二品と変わり種の献立

胡椒飯はおいしい。程よいピリッとした辛みと出汁がいいバランスです。

呉州汁は汁自体の味が豆腐の味噌汁のような感じがしますね。 でも鰯の臭みは感じず、むしろ香ばしい風味でネギも甘くうまい。 うりは胡瓜の浅漬けに近い味で食べやすく、胡椒飯ともあいました。

六日目・いかと里芋の煮ものとネギ汁

六日目のおかずは、屋台で売られていたとされている「いかと里芋の煮もの」。 当時、自炊が得意ではない独身江戸っ子たちのために煮売り屋と言われる屋台がありました。 その屋台に家にある食器を片手に買い出しにいき、家で食べていたそうです。

いかと里芋の煮もの
スルメイカ 1〜2杯/里芋 6〜8個/水 1カップ/酒 大さじ1/砂糖 大さじ1.5/醤油 大さじ2
ネギ汁
長葱 1本/だし 500ml/醤油 大さじ1/みりん 小さじ1/油揚げ 1/2枚

イカの旨みを、里芋に移す

まな板の上でスルメイカの胴体を包丁で輪切りにしている手元
胴体は輪切りに、ゲソは半分に切っていく

まずスルメイカを捌いていきましょう。胴体と足をわけ、口を取り除いていく。 スルメイカも江戸湾でよく獲れる海の幸で、庶民にも親しまれていました。

里芋は皮を剥いたら一度下茹でをして、ぬめりをとっていきます。 大体五分ほど茹でたら、一度上げておきます。

鍋に水、醤油、酒、砂糖を入れて煮立たせたら、イカを入れて三分ほど煮ていく。 そしたらイカを一度取り出して、煮ていた鍋に里芋を入れていきます。 こうすることでいかの旨みが里芋に染み込んでいくのです。

藍と色絵の鉢に盛った、イカの輪切りと里芋の煮もの
煮立ってきて里芋に火が通ったら、イカを戻して完成

余熱で蒸らす、ネギ汁

まな板の上で長ネギを包丁で斜め薄切りにしている手元
ネギを斜めに薄切りにし、油揚げは細切りに

汁ものが無いのもさみしいので、簡単に作れるネギ汁も用意しましょう。 出汁を引いた鍋に油揚げを入れて、醤油、みりんを加え煮ていきます。

煮たつ前に火を止めたら、ネギを入れて蓋をして余熱で蒸らしていく。 こうすることでネギのシャキシャキっとした食感を残しつつ、 火がゆっくりと通っていくわけですな。

朱の椀によそったネギ汁。斜め切りのネギと油揚げが浮いている
一分ほど蒸らせば、ネギの甘みと香りが溶け出した滋味深いネギ汁の完成
六日目の膳。冷や飯、ネギ汁、イカと里芋の煮ものが並んでいる
六日目。屋台で売られていたとされる煮ものが主役

これはたまりません。 味がシミシミの里芋はもう柔らかく、イカも歯ごたえがしっかりとしておいしい。 ネギ汁もシンプルながら素材の甘味がしっかりと感じられます。

当時のように猫まんまにして、
残りを掻っ込む。

七日目・ねぎ雑炊と大根三ツ輪漬

最終日の七日目はねぎ雑炊と大根三ツ輪漬。 ねぎ雑炊は好きな味噌汁に冷や飯とネギをいれるだけの簡単料理で、 まぁねこまんまにちかいものなのかもしれませんね。

ねぎ雑炊
冷や飯/お好みの味噌汁 500ml/刻みねぎ 適量
大根の味噌汁
大根 1/4本/大根菜 適量/だし 500ml/味噌 適量
大根三ツ輪漬
大根 200g/青柚子 1個/唐辛子 1本/酒 大さじ5/醤油 大さじ2

まずは大根の味噌汁から

今回は大根のお味噌汁で作ってみましょう。 大根は皮を剥き薄くいちょう切りにしていきます。 薄く切ることで火が通りやすくなり、時短につながるそう。

次に大根菜も細かくきざみ、それぞれを沸かした出汁の入った鍋に入れて煮ていく。 大根が半透明になってきたら味噌を溶き入れて、大根の味噌汁の完成です。

大根の味噌汁の鍋に、おひつから冷や飯を入れているところ
おひつから冷や飯を直接この大根の味噌汁に入れ、好みの固さになるまで煮ていく

冷や飯をこうすることで温かくたべられるのは、いいアイデアですな。 ではネギを細かく刻めば準備は完了。

朱の椀によそったねぎ雑炊。刻みネギがのっている
雑炊をお椀によそい、さいごに刻みネギを載せたらねぎ雑炊の完成

ですがよく考えたら、ねぎ雑炊というより大根の雑炊では。 まぁ、いっか。

三十分で、味がしみる漬物

まな板の上で大根を薄い輪切りにしていく手元
まず大根の皮を厚めに剥いておき、薄く薄く輪切りにする

つぎに青ゆず、唐辛子を輪切りにすれば材料は出そろいました。 柚子のいい香りが食欲をそそります。

そして器に大根を敷いていき、その上に青ゆず、 そして周りに唐辛子をまぶし、さらに大根と青ゆずを重ねていく。

つぎに、酒と醤油を鍋に入れ一煮立ちさせてアルコールが飛んだら、 このたれを先ほどの敷き詰めた大根の上に入れ、三十分ほど寝かせましょう。

深緑の器に、輪切りの大根と青柚子、唐辛子を重ねて漬けたもの
いい感じにしみていそうだ。これで大根三ツ輪漬けの完成
七日目の膳。ねぎ雑炊と大根三ツ輪漬が並んでいる
最終日のご飯が出そろった

冷や飯が温かくなり食べやすくなったこともそうですが、 なによりお米自体にも味がしっかりとしみている。 大根の食感とネギの食感の相性もいい。

大根三ツ輪漬は、柚子のさわやかな風味と唐辛子のアクセント。 何より三十分漬けたとは思えないほど味がしみこんだ大根がたまらん。 食感もしっかりと残っているのに味もしみしみで、いい漬物をみつけてしまいました。

一週間を終えて

畳に据えた膳に、汁椀・飯椀・煮ものの鉢が並んでいる
汁と菜と飯。一汁一菜が、江戸庶民の典型的な夕食の基本形だった

七日分を並べてみると、献立の骨格はよく似ていました。 おひつの冷や飯があり、漬物か煮ものが一品つき、多くの日はそこに汁がつく。 変化をつけていたのは、汁の具と漬物のほうです。

冷や飯も、そのまま食べることは多くありませんでした。 煎茶をかけて茶漬けにし、味噌汁を注いで雑炊にし、あるいは猫まんまにして掻っ込む。

質素ながらも、季節の恵みと
保存の知恵を活かした食事。

食文化が発展した江戸時代。 しかしその実態は、庶民にとって決して豊かなものではありませんでした。 一週間あっというまでしたなぁ。

本編動画

七日分の仕込みから実食までの全工程は本編で

参照した史料

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